くまさん

プログラム司会

自己紹介

私は、若いころから言葉に興味がありました。市井の人たちの話し声に耳を傾けたり、文章を読んだり、書いたりすることが好きでした。日本や外国の文学にも親しんだものです。もう40年も前のことですが、学生時代は東北や関東地方で方言調査に携わりました。見知らぬ土地を歩き回り、古老から話を聞きながら、その時に特徴のある言葉やアクセントなどを集め、文字や録音機で記録して回ります。茅葺き屋根の民家、よく手入れされた田畑が広がる農村、夕暮れ時に味噌汁の匂いがたち込めるように密集した集落…。東京から来たうさんくさいはずの学生を、収穫したての野菜や果実でもてなしてくれます。調査の先々で出会う素朴な人々とのふれあいは、生涯忘れられない宝物です。還暦を超えた今、感受性豊かだった若き日を懐かしく思い出します。ありのままの人間や自然が大好きでした。

体験談

フィールドワークといわれるこのような経験が、私と社会のつながりの原点となりました。残念ながら、仕事として全うすることはできませんでしたが、いろいろな人々と出会い、ともに泣いたり笑ったりできる人間になろうと努めました。また、それを楽しんでいました。しかし、いじめ、裏切り、恨み、ねたみ…年齢を重ね、さまざまな困難に直面する中で、人間不信に陥り、誰の言葉も耳に入らなくなりました。理路整然と言葉で他者を罵倒し、完膚なきまでに打ち倒す。いつの日かパワハラをする側になっていました。無口になり孤立していくうちに、自分を見失い、依存症による問題行動をくり返すようになっていたのです。思えば人格が180度変わっていたように感じます。すべてを失いました。が、家族に支えられて、回復を目指して大石に通うようになりました。今現在は、喜怒哀楽…かつての人間性、感受性を取り戻しつつあると感じています。残りの人生を、他者とのかかわりを大切にし、穏やかで当たり前の日常生活を送れるように心がけていきたいと思います。