渡辺 伊織さん

清掃指導員、グループホーム世話人、
プログラム司会

自己紹介

私は薬物依存症の当事者ですが、2024年4月に精神保健福祉士の資格を取得しました。きっかけは自助グループで知り合った仲間の依存症の学会発表をお手伝いさせていただいたことです。その仲間は精神病院で長く音楽療法プログラムに携わっており、発表内容にはその経験が豊富に生かされ、パネリストの先生の講演が素晴らしかったことも相まって大変な感銘を受けました。これまで、勉強や仕事に対して真面目に打ち込めなかった自分ですが、いつしか自らもこういった取り組みに携わることを目標に精神保健福祉士を目指すことになりました。

依存症の専門クリニックで、当事者としての経験だけでなく精神保健福祉士としての経験を積みながら、同じ病気で苦しむ患者さんのお役に立てるようより一層努力していけたらと思います。

体験談

私は安易な気持ちで手を出してしまった薬物が15年以上やめられず、9年前、大石クリニックに通院を始めました。それまでは1日に数十錠~数百錠のクスリの濫用、重篤な依存に陥っておりました。

最初はデイケアに通うことになりました。最後の入院先を退院したときには、身体からクスリが抜けた状態でしたが、長年薬物の影響下にあったせいで、人と接するのが怖くて、人の顔もまともに見られず、いつも下を向いて歩いていました。また、世の中のあらゆることに関心が湧かず、生きていて何の楽しみもなく精神的にもズタボロでした。そんな状態でしたが、毎日デイケアに通い、治療ミーティングを受けているうちに、だんだんと自分が薬物を使用する前に戻ってきたのを実感しました。やがて、同じ依存症の患者さんと交流したり、時にはデイケアのプログラムを抜け出して横浜地方裁判所で傍聴を熱心にするようになりました。そのことにより、喪われた世間への関心、知的好奇心なども取り戻すことが出来たのを実感しました。

そうして、少しずつ断薬をしながら、精神的にも元気を取り戻した頃、主治医の先生から「仕事をしてみたらどうだ」と、わくわくワーク大石で就労に向けた訓練を勧められました。私にとっては仕事をしながら断薬を続けるのはある意味鬼門な感じで課題でした。それまでの自分の人生では、仕事の疲れを取ったり、リフレッシュするのにも薬物を使用するなど、薬物と仕事に深い関わりがあったからです。また、勤務時間の関係で出られるクリニックのプログラムが減ったため、外部の自助グループに参加する、プロ野球観戦や鉄道に乗ること、裁判傍聴など、意識して外に出る習慣を続けるよう心がけました。訓練は主にホテルの清掃、ベッドメイクを経験しましたが、現場の職員さんからも褒めていただけるようになり、その後は公園清掃、血液検査場などほかの現場に行かせていただくなど、少しずつ社会で働いていく自信をつけながら、充実した生活を取り戻していくことができました。

4年前、グループホームが出来るということで、世話人、わくわくワーク大石の職員、リカバリーとしてクリニックのミーティングの司会を担当させていただくこととなり、2024年に精神保健福祉士の資格を取得できました。

自らの薬物の問題で、どん底にいたとき、私は今のような暮らしが出来るとは到底思えませんでした。依存症回復につながるヒントは大石クリニックに沢山あると思います。

お悩みの方、当院では経験豊富な医師、看護師、心理士、精神保健福祉士、リカバリー(当事者)スタッフが在籍しておりますので、ぜひ一度ご来院ください。