依存症は否認の病気とも呼ばれ、本人が問題を自覚していないこともあります。その場合、途方に暮れるのは一番近くにいる家族です。そのため、当院では父親や母親、子供の依存症の問題で困っているご家族を対象とした家族相談を行っております。本人がいないのに家族だけで受診して意味があるのかと疑問に思うかもしれませんが、依存症という病気には十分意味があります。実は家族が良かれと思って行っている行動の中には、本人の飲酒行動に拍車をかけてしまうものがあるのです。
例えば、こんなことをしていませんか?

  • 家に常にお酒がないと怒るため、家族がお酒を買って用意しておく
  • 二日酔いの息子の代わりに会社に欠勤連絡をする
  • 息子の部屋に転がっている空き缶を片付ける
  • 酔って帰ってくる夫に「また飲んで帰ってきて!いい加減にして!」と怒る
  • 父が酔ったまま失禁してしまったため、その後片付けをする
  • お酒を飲む夫に向かって「もう飲まないって約束したじゃない。これ以上はやめて」と無理矢理お酒を奪う

アルコール依存症 家族イネーブリング
上記の行動は「イネ―ブリング、世話焼き」「直面化」と言われています。こういった行動を家族が続けているうちは本人が飲酒問題を認めて治療を受けることは不可能です。むしろ飲酒を隠そうとして嘘をつく、会話を避ける、言い合いになるなど関係性は悪化の一途を辿ります。治療の提案をするどころではありません。しかし、家族が適切な対応を身につけることができれば、本人との信頼関係を築きなおし、問題と向き合うためのサポートをしていくことができます。
お酒についてオープンに話し合える良好な関係性ができて初めて、本人を治療につなげるチャンスも出てきます。アルコール依存症者のご家族には以下のプログラムの参加をお勧めしています。

1、家族勉強会

毎週 月曜日 10:20~11:50
全5回で依存症とはどういう病気なのか、その特徴や推奨される家族の関わり方や持つべき考え方など、依存症の基本的な知識を学びます。

2、CRAFT(クラフト)

毎週 木曜日 13:35~15:05
全8回で本人との良好な関係性を築くための考え方や声のかけ方について、実践を通して具体的なコミュニケーションを学びます。

3、家族教室

毎週 金曜日 10:20~11:50
毎回スタッフが持ってくるテーマに沿って家族自身の考えや感じたことなど、体験を話します。他人に話せないような内容でも同じ問題を抱えたご家族同士であれば、安心して話ができます。