アルコール依存症の原因・発症の要因

① 依存症に陥る脳のメカニズム

依存症とは、ある物質の摂取やある行為を行うことで問題が生じてしまうにも関わらず、その行動をやめられなくなる病気です。「やってはいけないとわかってはいるんだけどやめられない」というコントロール不能の状態に陥ります。このような人に対し、かつては意志の弱さや倫理観の低さのせいであると思われがちで、精神的な病気であるという認識はほとんどありませんでした。しかし実際には脳の仕組みそのものが変化してしまっているのであり、条件さえ揃えば生まれや育ち関係なく誰でもなりうる病気なのです。

では依存症になるまでにはどのような経過を辿るのでしょうか。
どのような依存症も、始まりはちょっとしたきっかけです。アルコールは日常生活において当たり前に存在するものであるため、きっかけとなる場面はたくさんあります(冠婚葬祭、大学サークルや会社の新人歓迎会など)。後に依存症になる方も最初は一般的な飲み方をしています。しかしある程度の期間繰り返し飲酒の機会を設けるうちに、だんだんと酒量や頻度が増えていき、それに伴い何らかの問題(対人的・経済的・身体的・精神的な問題)が生じます。健全な飲み方をしている人であればこの時点でしばらく飲酒を控えることができますが、一部の人はそれができずに飲酒を継続します。この一部の人の脳にはある変化が起きています。

依存症 脳ドーパミン
依存症の脳の仕組みを理解するには、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不可欠です。ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生き物は快楽や喜びを感じることができるのですが、アルコールを摂取することでもドーパミンは分泌されます。つまり、飲酒が習慣化すればするほどドーパミンが分泌される頻度も増え、快楽や喜びを感じやすくなります。

これだけ聞けば良いことだと思うかもしれませんが、恐ろしいのは神経伝達物質は有限なものであるということです。永遠に分泌され続けることはなく、すぐに枯渇します。すると、それまでの強烈な快楽が得られなくなるためにさらに飲酒行動は促進され、ドーパミンは枯渇し、むしろ焦りや不安、退屈感といった不快体験が増えていく…という悪循環に陥ります。このレベルにまで達すると脳は快楽だけを求めて体に指示を出すため、簡単には抗えません。

このような経過を経て、「やってはいけないとわかっているんだけどやめられない」という依存が形成されます。

② アルコール依存症になる原因は?

アルコール依存症は複数の要因が絡み合って発症に至るため、これが原因であると明確に述べることはできません。とはいえ、発症リスクを高める危険因子として認められているものはいくつかあります。

  • 飲酒の開始年齢が早いこと
  • 胎児期に母親が頻繁に飲酒していること
  • 遺伝と家庭環境(親がアルコール依存症であること)
  • うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害など他の精神疾患を合併していること
  • 若い頃からの飲酒や度の過ぎる飲酒に対し周囲が寛容な価値観を持っていること

上記を満たすことで必ずしもアルコール依存症を発症するとは限りませんが、その可能性は高くなるといわれています。

本人が来たがらない場合

まずは対応を相談するためにご家族が受診してください。アルコール依存症は家族とのコミュニケーション次第で問題行動は悪化も改善もします。本人との関係性が改善すれば治療に繋げる機会も増えるので今すぐご相談してください。