DVはコミュニケーションです。コミュニケーションは相手との関係性の上成り立っています。加害者の方からはよく「パートナーが悪い、言ったことをやらないから」「全然できないんだから自分に何を言われてもしょうがない」「パートナーの方からケンカを売ってきたんだ」といった言葉を聞きます。確かに、パートナーとのコミュニケーションの延長線上にDVは行われています。ですが、だからといって「暴力を振るって良い」という理由にはなりません。いかなる理由があれ、DVは相手を傷つけます。傷つけられたパートナーは反抗したり無力感に陥ったり逃げたりします。いずれにせよ二人の関係性は悪化し、別れ話や離婚話、別居など、「こんなはずではなかった」という未来が待っています。

つまり、DVのような一方的なコミュニケーションは、結局のところ回りまわって加害者自身を傷つけることになるのです。「こうあるべきだ」という理想に無理やり近づけようとすればするほど、パートナーは離れていきます。

DV被害者
パートナーから「あなたがしていることはDVだから治療を受けてほしい。でなければ離婚する」と言われた、離婚することが決まったが今の自分のままでは同じことをくり返すと思った、これからも良い父親でありたいなど、受診目的はいろいろあるかもしれません。

どのような理由にせよ、パートナーや子どもとの良い関係性を築いていきたいのであれば、あなたが変わることが第一歩です。これを機に、DVという自他を傷つけるコミュニケーションを手放し、自分も他者も尊重できるコミュニケーションを身につけていきましょう。当院ではDVの専門治療として、診察の他に以下のプログラムを行っております。

加害者向け集団精神療法(更生プログラム)

毎週 水曜日 19:00~20:30
毎週 木曜日 19:00~20:30
DVとストーカー加害者の方が参加しているプログラムです。多い日には20名近くの患者さまがいらっしゃいます。使っているテキストは2種類です。

① 認知行動療法の考え方に基づいて作られているもの

カリフォルニアで行われているストーカー加害者治療プログラムのテキストを使用。
問題の否認、他責、思い込みなど自分の思考の歪みについて振り返る、感情をうまくコントロールする方法を考える、再犯防止のための対処行動を検討するといった内容。修了まで7~8ヵ月を要す。

② 選択理論の考え方に基づいて作られているもの

他者との間に適切な境界線を作り維持するための考え方、今後の新たな対人関係を良好にするためのコミュニケーションスキルを学ぶ。修了まで4~5ヵ月を要す。

③ ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)に基づいて作られているもの

思考や感情に振り回されることなく自分自身の価値を大切にした生活を築くための具体的なスキルを学ぶ。修了まで6ヵ月程度を要す。
同じ境遇の方が参加されているので共感できることがたくさんあります。一方で、他の人の話を聞くことで新しい考え方や価値観を知ることもできます。ぜひご参加ください。

本人が来たがらない場合

まずは対応を相談するためにご家族が受診してください。DVは家族とのコミュニケーション次第で問題行動は悪化も改善もします。本人との関係性が改善すれば治療に繋げる機会も増えるので今すぐご相談してください。