窃盗癖クレプトマニアの判決

平成26年○○月○○日宣告  裁判所書記官 ○○
平成26年特(○)第○号
上記の者に対する窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官○○出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役1年に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)
被告人は、平成26年○○月○○日午後○○時○○分頃、○○において、同店店長○○管理のおにぎり4個(販売価格401円)を窃取した。

(証拠の標目)
(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードの検察官請求証拠の番号を示す)
・被告人の当公判廷における供述
・被告人の司法警察員に対する供述調査(5丁のもの)(乙2)
・○○の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書(甲7)
・○○作成の被害届(甲3)
・司法巡査作成の写真撮影報告書(甲5)

(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法235条に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し、なお、被告人は平成25年○○月○○日○○簡易裁判所で窃盗罪により懲役1年6月に処せられ3年間その刑の執行を猶予され、本件の罪はその猶予の期間内に犯したものであるが、情状に特に酌量すべきものがあるから、同法25条2項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し、同法25条の2第1項後段によりその猶予の期間中被告人を保護観察に付し、訴訟費用については、刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

(量刑の理由)
1、本件の犯情について
本件は、スーパーマーケットにおいておにぎり4個を万引きした事実である。被告人は、被害品を手に持った後、持参したエコバッグに隠匿して被害店舗を出たものであって、手慣れており、大胆である。被告人は施設入所のための貯金をしたかったので、お金を使うのがもったいなかったと述べる。しかし、施設に入る差し迫った必要性はなく、被告人には相応の資産があることを考えると、特段酌むべき事情とは言えない。 一方で、被害金額は低額である。

2、犯情以外の事情について

(1)被告人は、これまで多数の万引きによる窃盗の前歴を有し、同じく万引きによる窃盗罪の罰金前科も2犯ある。その上、平成25年○○月○○日には、やはり万引きによる窃盗罪で懲役1年6月、3年間執行猶予の判決を受け、本件はその判決から約1年4か月の犯行である。このことからは、被告人の窃盗の常習性は深刻である。

(2)ア 被告人は、反省文を書くなどして反省の情を示している。被害品の代金は被害店舗に支払われており、被害店舗の意向で示談はできないものの、5万円の贖罪寄付をしている。
イ 被告人は、前回の執行猶予判決を受けた際に、そのことを親族らに話すことをせず、何ら、更生に向けた具体的な努力をすることもなく、単身生活を続けるなかで本件犯行に及んだものである。しかしながら、被告人は、本件で保釈された後、長男一家と同居し、いわゆるクレプトマニアの専門医を受診し、心理療法の一種とも考えられる○○という療法を受けるなど、自己の犯罪傾向の原因を見つめ、更生するための努力をしており、今後も継続する旨述べている。なお、被告人は、上記専門医から、クレプトマニアとの診断を得ている。
ウ 被告人の長男は、本件以前に、被告人が犯した万引きの一部を知り、被告人を叱責したことはあったものの、これまで、被告人の再犯を防止するための特段の対策をとることはなかった。しかし、本件犯行により被告人が逮捕、勾留されたことを契機として、保釈後は、長男は、家族の理解のもと、被告人を同居させて、医療機関への受診も含めて監督し、今後もそれを継続する旨証言し、その旨の嘆願書も提出している。そして、被告人の次男、三男も被告人が上記の専門医を受診する際の引率をするなどしてこれに協力し、今後も力を合わせて再犯防止に向けて協力する旨を誓った嘆願書をそれぞれ提出している。
エ 被告人は○○才であり、平成26年○○月○○日実施の健康診断の結果、医療を要する高血圧の症状が出現している。

3、量刑判断
本件犯行は上記のとおり執行猶予期間中になされたものであり、本件犯行態様及びこれまでの被告人の前科、前歴からは、検察官の意見のとおり、懲役刑の実刑が十分考慮される事案である。しかしながら、今回の被害金額が低額であることに加え、前回執行猶予が付されたときの状況と比して、被告人の更生へ向けた意識及び具体的な対策並びに被告人の親族らによる監督態勢は大きく前進している。被告人及び親族の、被告人の更生へ向けた具体的な姿勢は、被告人の社会内更生の可能性を示すものである。更に、保護観察所による指導、援護を加えれば、その可能性はより大きい。また、本件で実刑に処すことになれば、前刑の執行猶予も取り消され、相当長期の服役になるが、自業自得とはいえ、被告人の年齢からは酷な面もある。そこで、その他の上記に掲げた各事情も含めて考慮し、被告人を主文掲記の刑に処すものの、情状特に酌量すべきものがあると認め、被告人には、最後の社会内更生の機会を与えるべきであり、その刑の執行を猶予し、猶予の期間中保護観察に付するのが相当であると判断した。

(求刑 懲役1年2月)
よって、主文のとおり判決する。
平成26年○○月○○日
○○裁判所刑事第○室 裁判官 ○○

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