性依存症・性嗜好障害・パラフィリア症群

WHOにより30年ぶりに診断の基準と病名が変更になりました。

過去
現在

ICD-10の時代

1990年~2018年

ICD-11の時代

2021年~

性嗜好障害

(性嗜好異常)

パラフィリア症群

過剰性欲

強迫的性行動症

性依存症

(セックス依存症)

消滅

「パラフィリア症群」「強迫的性行動症」に変更になります

40年前までは私も強姦や痴漢は特殊な変態男のすることで、変態小説の話と思っていました。悪い事を繰り返すと一般の人には依存症と思われているのか、時々痴漢を繰り返す大学生を診るようになり、これは病気だと認識するようになりました。しかし当時の一般的な精神科の本を見ても、そのような疾患はありませんでしたが、ICD-10というWHOの分厚い本の中に「成人のパーソナリティおよび行動の障害」という項目の内の「性嗜好障害」という項目があり、その内に多くある細項目の最後の方に申し訳なさそうに「他の性嗜好障害」という項目があり、その中の文の1行に「触り魔的行為」があり、隣は動物との性的行為とか死体愛好症もこれも含むと書いてありました。この触り魔的行為(世界的には日本に多発する風土病なのですが)を社会に知ってもらうためには、この長ったらしい変態病名ではどうしようもないので、アルコール依存症をまねて「性依存症」という造語を作ったら良いのではないかと思っていましたら、いつとはなしにこの造語ができ、私もホームページや講演の時に一生懸命に広報していましたら、社会に定着するようになりました。もちろんWHOには「性依存症」なる病名もありませんし、博識の先輩からは「大石、適当な病名を作って嘘を書くな!」と結構ご指導いただきましたが…。
この「性依存症」を世界的診断基準であるICD-10に無理矢理あてはめて考えますと「性嗜好障害」+「過剰性欲」に近いのではないかと思います。このICD-10は統計のために作られた世界的な診断基準ですので、数10年ごとに最近の医学に基づき変更されます。2019年に30年ぶりに変更されることになり、ICD-11が発表されました。まもなく日本でもこのICD-11が使用されます。ICD-11によると「性嗜好障害」は「パラフィリア症群」に変更となります。大きな変更点は日本の風土病である「触り魔的行為」が昇格して「窃触病」という正式病名ができました。(私たちの日本の活動も世界に認められたのではと思っています?)。「過剰性欲」はICD-10の「性機能不全、器質性の障害あるいは疾患によらないもの」の小項目の1つの病名で、同項目には「オルガニズム機能不全」とか「早漏」があります。「過剰性欲」とは、過剰な性欲をときに訴えることがある。と記載されている疾患ですが、ICD-11では過剰な性欲が問題ではなく、性衝動を抑えられないことを問題として「強迫的性行動症」という病名になりました。すなわち性欲が過剰でなくても、性の衝動を抑えられず本人が苦しむということを診断の基準にしたわけです。
WHOがこのような新疾患を作った理由は、正式に疾患として認知されることによって、治療を求める多くの人の治療アクセスを向上することをねらったと思います。「性同一性障害」が病気でなくなり「性別不合」となったのもこれと同様と思います。この結果、日本でもLGBT法の整備に繋がりました。まさに30年ぶりのWHOの大英断だったと思います。
大石クリニックとしては、世界的診断基準が30年ぶりに変更となったからには「性嗜好障害」「過剰性欲」ではなく「パラフィリア症群」「強迫的性行動症」に変更し、一般的にはよく知られている「性依存症」は社会にこの病気を広めるということに関しては有効ではありましたが、大きな問題点も同時に背負いこむことになりました(後述)。またセックス依存症は軽蔑と偏見を示すことが多い言葉ですので、今後はできるだけ使用しないようにしたいと思います。

※㊟当ホームページは現在ICD-10よりICD-11に変更中です。

性的な行為は、本来、それ自体が問題になることはありません。しかし、痴漢・盗撮など(繰り返す性犯罪)の社会的に問題につながる行為をしたり、性交渉や風俗の利用回数が極端に多くなったりすると、性嗜好障害や強迫的性行動症(性依存)という病気の可能性があります。国際的な疾病に対する統計基準であるICD-11によると、前者の症状は性嗜好障害に、後者の症状は強迫的性行動症に分類されます。

性嗜好障害とは、一般的には精神的・社会的なリスク(例えば強制わいせつや迷惑防止条例違反など法に触れる)を冒してまで痴漢や盗撮、露出行為等の性的な問題行動を行います。また、強迫的性行動症では、特定の性的行動(不倫、風俗通い、AV・ポルノ動画の閲覧、マスターベーション)をくり返すために人間関係に支障をきたしたり、借金をして経済的な問題が生じたりします。どちらも性的行動のコントロールが効かなくなる状態のことを言います。

なお、この病気の中には女性に対する認知のゆがみが大きいがゆえ、あるいは子供に対して性的関心を持つがゆえに性犯罪へつながってしまう人もいます。通常の依存症とちがい、被害者に対する影響は大きく、被害者は大きな精神的ダメージを長期間受け続けます。また、まだ明らかになっていない余罪が多く、実際の犯行のうちほんのわずかしか表に出ていないことがある点も問題です。

当院は通院外来のクリニックですので、家事や仕事を続けながら性嗜好障害・性依存の治療に取り組めます。県外の方でも通院の仕方によっては治療が可能ですのでご相談ください。当院では患者様のご都合に合わせて治療方法を選択できるように、治療コースをご用意しております。主治医と相談してご自身に合った方法で治療を開始していただけます。入院が必要な場合には専門病院と充分な連携があります。夜間診療も火・水・木にやっており、夜間のみでも治療ができます。また悩みを抱えるご家族への家族相談には特に力を入れています。

本人が来たがらない場合

まずは対応を相談するためにご家族が受診してください。依存症は家族とのコミュニケーション次第で問題行動は悪化も改善もします。本人との関係性が改善すれば治療に繋げる機会も増えるので今すぐご相談してください。