就労支援のタイプと選び方

就労系の支援事業所では、どの程度の就労がなされているのでしょうか?厚労省が自治体に指示して公表させているデータ(令和2年~5年分)を元に、施設毎の就労定着率(一般企業に就労してその後6ケ月以上就労を継続できた利用者÷定員)を算出してみました(詳細は後述します)。初めて目にする方も多いと思われるデータです。
令和2年~5年の4年間平均で6%です。0%というのは、4年間に「6ケ月以上継続して就労している利用者」を1人も出していないことです。この0%の施設が全施設の43%もあります。この状況に驚かれている方もいると思います。一方で、34%の就労率を上げている就労施設があることも事実です。

この背景には、就労施設の構造的問題の存在が挙げられます。ひとつ目は、就労施設は利益を追求できる民間会社でも運営できることです。施設の倒産を恐れるあまり、治療より、利益を優先される傾向があります。経営が安定していないと、理想的な医療は行いにくくなります。

ふたつ目は、日本の保険制度において、基本的には就労施設は月間の総利用者人数に応じて、国から報酬を受け取る制度になっていることです。このために就労施設が利益を上げようとすると、多くの新規の利用者を集めるか、利用者の利用期間を延ばせばよいことになります。利用期間を延ばすことは就労で退所することに消極的になり、結果、就労率が低くなる傾向があります。

この2点は就労施設の運営に大きな影響を与え、収益確保の考え方や就労に対する取り組み等の組み合わせが施設の方針となって現れます。これら方針によって、就労施設は大きく5つのタイプに分類されます。

就労施設の5つのタイプ

経営重視

タイプ①

定員数

20人以下

運営施設数

単独

施設種類

自立・B型

就労定着率

0~9%

エリア

B

  • 小規模で利用者確保に苦労
  • 利用者の就労に消極的、利用期間は長い、就労定着率は低い
  • 施設に入る必要のない利用者に入所を勧める
  • 運営しやすい自立訓練やB型が多い
  • このタイプが施設数は全国で一番多い

利益重視型

タイプ②

定員数

150人

運営施設数

単独・複数

施設種類

B型主体

就労定着率

0~9%

エリア

C

  • 大規模化、入所強化、就労阻害なりがち
  • 利用者を積極的に集約する
  • 退所を極端に避ける、あるいは阻害する傾向
  • 地価を考え、地方にあることが多い

伝統型

タイプ③

定員数

150人

運営施設数

複数

施設種類

B型・移行

就労定着率

0~9%

エリア

C

  • 老舗型で、利用者想い
  • 就労には消極的
  • 施設内で利用者をレベルアップさせる意識あり、作業や保護就労に熱心
  • 一般社会にレベルアップする意識は強くなく、就労を意識的に阻害しない
  • 患者の生活を考え、都市部にあることが多い

現代単独型

タイプ④

定員数

20人以下

運営施設数

単独

施設種類

自立・B型

就労定着率

15%以上

エリア

A-2

  • 就労重視、適正規模、ネガティブフォース少ない
  • 一般就労に対して積極的で高い定着率
  • 利用期間は長くなく、自立訓練タイプが多い
  • 患者の社会復帰を考え、都市部にあることが多い

現代病状重視

タイプ⑤

定員数

40人以下

運営施設数

単独・複数

施設種類

2施設以上

就労定着率

15%以上

エリア

A-1

  • 軽症・重症を分けて対応、大規模傾向
  • 軽症利用者には移行・自立で対応し、高い就労定着率
  • 重症者にはB型で対応し、就労定着率は一般施設に比べるとやや高いレベル
  • 2種類の治療を行うため大規模の施設か、多数の施設を持つ

就労施設のエリア分け

エリアマップ

平均就労定着率を縦軸に、施設の規模を横軸にとると、おおよそ4つのエリアにグルーピングできました。就労定着率のみならず、タイプの特徴やB型のみなのか、他の事業も運営しているのかなど、就労施設の特徴を理解し、個別の就労施設とコンタクトすることが望ましいのではないかと思われます。

エリアとタイプ

平均就労定着率を縦軸に、施設の規模を横軸にとると、おおよそ4つのエリアにグルーピングできました。就労定着率のみならず、タイプの特徴やB型のみなのか、他の事業も運営しているのかなど、就労施設の特徴を理解し、個別の就労施設とコンタクトすることが望ましいのではないかと思われます。

エリア

A-1  A-2
このエリアにある就労施設は高い就労定着率を誇り、短期間で利用者を就労させる方針を持っています。A-1グループは簡易識別票の現代病状重視タイプが多いエリアです。A-2グループは、簡易識別票の現代単独施設タイプの多いエリアです。このために以下の様なデータ上の特性を持っています。
  • 就労に力を入れているために、就労に有利な就労移行を持つ事業所が多い。
  • 施設は短期間で利用者を就労させる方針があるので、利用期間を延長する気持ちが施設側に少ない。このためにB型を持たない事業所が多い。(A-2)
  • 施設は短期間で利用者を就労させる方針があるので、B型単独施設にならない。
  • 21人以上ではB型を持つ施設が多いが、これは症状に対応するために持っていると思われる。(A-1)
  • 利用者の不足のために、ネガティブフォースを持つようになるのを嫌がります。このために大規模でなく、21~40人の中規模以下の事業所が多い。
  • 利益より利用者を重視するので、施設の規模を安易に拡大することは少ない。このために施設拡大度では「一定」、「横ばい」が多い。
  • 就労定着率は高い。(15%以上)

エリア

B
このエリアにある就労施設は一般的には利用者の確保に苦労しています。簡易識別票の「経営重視タイプ」が多いエリアと思われます。このために以下の様なデータ上の特性を持っています。
  • 利用者が少ないので、定員数は20人以下の小規模施設がほとんどです。
  • 利用者が少ないので定員数を増加させることができません。このために施設を拡大することはあまりありません。
  • エリアAの施設に比べると、利用者を就労させる方向性が強くありません。このために就労移行事業所を持つことはまれです。
  • 利用者が少なくても運営できる、B型単独施設を持つ傾向があります。
  • 就労定着率は低い。(9%以下)

エリア

C
このエリアはエリアA・Bに比べて定員数が多く、エリアAに比べると就労定着率が低いのが特徴です。私は簡易識別票の利益重視タイプと、宇都宮病院時代タイプが混在しているエリアと思います。宇都宮病院時代タイプの事業所は、

  • 古くから設立されているために老舗であり、
  • 利用者の施設内でのレベルアップを考えるために高工賃であることが多く、
  • 利用者は長期間通所することになるのでB型事業所を持っており、
  • 利用者の事を考えるので意図的に就労を阻害することがないために就労移行事業所を持つ傾向があり、
  • 事業所の利益を重視しないので、施設を拡大する傾向が弱く、施設拡大には消極的である

利益重視タイプは定員数を増加させて利益を求めなければなりません。

  • 施設拡大には積極的
  • 少ない利用者でできるだけ施設を大きくするために利用期間が長く設定できるB型事業所を持ちます

結果として、利益重視タイプは施設拡大に積極的で、B型を持っているか、B型事業所のみを運営しているタイプとなりやすくなります。

工賃月額(B型)

依存症の専門施設は工賃が低いのかどうかです。図-5(P-40)で示すように、工賃を稼ぐことを目標にしたB型事業所でも、1カ月の平均工賃額が11,270 円/月です。そして就労移行事業所、自立訓練事業所はB型事業所より工賃が低いのが一般的です。これでは国連の報告通りと言ってよいでしょう。

例えばあなたが1カ月に6万円の障害年金を受給していたとしても、合計で1カ月に約7万円にしかなりません。これでは持ち家であっても生活できないでしょう。B型事業所では自立は困難と思われます。自立するなら就労移行支援事業所から就労するのが一般的と思われます。

ではしばらくB型事業所で訓練を受けて、実力を上げて、その後にA型事業所や就労移行支援事業所に転籍して、さらに階段を上るように実力を上げて、一般就労をするというのはどうでしょうか?理論的にはうまくいきそうにも見えます。しかし障害者支援法の20年間の実績では、B型事業所からA型事業所に、あるいはB型事業所から就労移行支援事業所に移行できる可能性が著しく低いことはわかっています。またこれだけでなくA型事業所から一般就労する可能性も著しく低いことも、また、就労移行支援事業所から一般就労する可能性も必ずしも高くないこともわかっています。このために厚労省も、この様にランクを徐々に上げ就労を目指す方法では、ほとんど就労できない旨を発表しています。

結論としてはB型事業所では生涯親のすねかじりか、親の遺産で生活するか、生活保護になる可能性が高いと思われます。

まとめ

日本の施設は国連から「低賃金で閉鎖的な施設に、長期間にわたって隔離しているおり、障害者を差別して、人権侵害を行なっている」という指摘を受けています。この様な状況を解決するために、厚労省は平均就労定着率と平均工賃月額を公表するよう各地方自治体に通知しました。利用者が個々の施設の実態を把握できるようにし、その上で施設を選んで下さいと言っていると考えられます。今回は、そのデータを取得して分析を行ないました。

そのデータを分析した結果の全体像は先に示した「平均就労定着率6%」です。これからは分析結果を更に詳しく見てみると、少しでも就労の可能性を上げたいと思う人は、事業所別の就労定着率を見て下さい。就労B型事業所や自立訓練事業は約50%の事業所が4年間で6ケ月以上継続して働き続ける就労者を1人も出していないので、就労できる可能性は低いと思われます。就労移行支援事業所は平均26%の障害者が就労していますので、就労を望むのなら、就労移行支援事業所を選択することが良いと思われます。ただし、就労移行支援事業所は全国に12事業所しかなく、地方では見つからない自治体も少なくありません。また、12施設のうち、11施設は他の就労支援事業も行なっている多機能施設で行なわれております。このために自分が就労移行支援事業所を希望しても、必ず就労移行支援事業所に配属されるかどうかは分かりません。

このような状況なので、次善の策としてB型事業所、自立支援事業所の中で良好な就労定着率を上げているトップクラスの施設を選ぶことが考えられます。そうすれば、就労移行支援事業所の中ランクと同率の就労定着率を期待できると思います。また、この資料に「資料編」を付けております。ここには就労定着率を詳細に分類して、見てすぐ分かるように円グラフにしましたので参照してください。就労定着率の現状がつぶさに分かると思います。

就労施設を選ぶ際に「働く」、つまり、一般企業に就職したいことを第一に考えるのであれば、就労定着率のみならず、簡易識別表に基づき、タイプの特徴やB型のみなのか、他の事業も運営しているのかなど、施設の特徴を理解し、個別の施設とコンタクトすることが望ましいのではないかと思われます。

就労支援の選び方

依存症の専門施設には経営重視型・利益重視型・伝統型・就労重視型など複数のタイプが存在し、国連の勧告は「居場所型から通過型へ」という日本の福祉全体の変革を迫っています。
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国の支援制度

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専門施設の種類と選び方

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全国の専門施設のデータ

専門医からの5つのアドバイス

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一般社会で働くことが生活の質を高め、病状を軽減させます。